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こんな国に生まれて…日本狼…純粋バカ一代…山崎友二

こんな国に生まれて…日本狼…純粋バカ一代…山崎友二

「ひとりごと青年」

【1】
運河と江戸川にの一部を1周巡視して出張所に戻る。いつも4時ごろには戻るのだが、食堂にいて「待機」ということになる。
俺は、退屈なので歩いて巡視兼散歩ということで運河縁の公園に行ったりしていた。
ある日、公園にいると、向こうからけんか口調の青年が近づいてくる。俺に向かっているのかと身構えたが、激しいけんか口調のまま横を通り過ぎて行った。
ある日などは、公園のトイレの中から、けんかの声がした。中学生がリンチ騒ぎでもやっているのかと中へ入った。おとなが入れば彼らの状況も変わるだろうと思った。しかし、トイレの中には誰もいなかった。
大便所の中から、激しいけんか口調が聞こえる。だが、よく聞いていると、一人の声しか聞こえてこない。壁に体が当たる音もしない。ドアがぱたぱた揺れている、鍵は閉まっていないようだ。

【2】
トイレという個室に入って大声出してなにやってんだ。
俺は、ドアを開けて「あんた、何してんの?」と聞いてみようとして、やめた。体に寒気が走って本能的に止めたみたいだ。
きっと、精神的に参ってる人なんだろうとは思った。だけど、そういう人がその辺をうろついていいのか。
出張所に戻り、食堂のおばちゃんと運転手さんに
「外に、ひとりでけんかしてる人がいるんですけど、いいんですか」
「ひとりでけんか?ああ、あの人か」
この辺では有名な人らしい。
「危ないから、家族に連絡して引き取らせたほうがいいんじゃないですか」
「うん、家族といっしょに住んでたと思うよ」
「だから、野放しにしないで、家から出さないでと連絡したほうがいいですよ」

【3】
食堂のおばちゃんと運転手さんは平気なようで、
「ううん、あの人は、人に危害を加えるわけじゃないから」
「そう、ひとりでけんかしてるだけだから」
へぇ~、いいんだ。
「だって、公園にいる子供たちが怖がるじゃないですか。怖がって親の足にしがみつくじゃないですか」
「そうねぇ、うちの子も小さい頃は、足にしがみついたかもしれない。今は、こっちがしがみつきたいけどね」
「俺は、子供がいないからしがみつかれたことないけど。いいんだろうねぇ、頼られてる感じで」
それでいいの?人に危害を加えたり、迷惑にならなければ、いろんな人が世の中にいていいということかな。自分も含めて。
(終)


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